滋賀県大津市
JR瀬田駅前の精神科・心療内科

おうみのくにクリニック

注意欠如多動症(ADHD)について

注意欠如多動症(ADHD)とは、神経発達障害の一種であり、「不注意(集中力がない、ミスが多い)」「多動性・衝動性(じっとしていられない、考える前に行動してしまう)」の特徴を持つ病気です。症状は子供の頃から始まりますが、大人になってから気づき、社会生活で行き詰まって受診される方も非常に増えています。

特性による生きづらさは、本の本人の努力不足ではなく、「脳の特性と、周囲の環境や仕組みが合っていないこと」で起こります。お薬で脳のベースを整えつつ、仕組みづくり(環境調整)を生活に取り入れることで、ミスやストレスを減らすことができます。

診断と症状(DSM-5による基準)

DSM-5では、以下の症状の現れ方や具体的表現を総合的に評価して診断を行います。以下の症状のうち、子ども(16歳以下)は6項目以上、大人(17歳以上)は5項目以上が該当することが基準となります。

1. 不注意に関する9つの症状

  1. 細部への注意不足・ケアレスミス: 
    【子ども】テストでの単純な計算間違い、問題文の読み落とし、漢字の細かい線の書き忘れが目立つ。
    【大人】請求書の数字やデータ入力の桁間違い、メールの誤送信、書類の確認不足による見落としが多い。

  2. 注意を持続することの困難さ(集中力が続かない)
    【子ども】授業中、10分~15分もすると他のことを考えてしまう。単調な宿題や作業を最後までやり遂げられない。
    【大人】長時間の会議や退屈な講義、あるいは長いビジネス文書を読んでいる時に、すぐに別のことを考えてしまい集中を維持できない。

  3. 直接話しかけられているのに、聞いていないように見える:
    【子ども】名前を呼んでも返事をしない。目が合っていても、話の内容が右から左へ抜けていっているように見える
    【大人】1対1で指示や会話をされている最中なのに、頭の中で別のタスクを考えていて「上の空」だと思われてしまう。

  4. 指示に従えず、課題や義務をやり遂げられない:
    【子ども】「手を洗って、宿題を出して、着替えなさい」といった複数の指示をされると、途中で忘れて別の遊びを始めてしまう
    【大人】工作や仕事の手順を途中で忘れてしまったり、やり始めた業務を放置したまま別の案件に手を出してしまい、どれも中まま中途半端に終わる。

  5. 順序立ててタスクや活動を進めることが苦手(整理整頓・計画性の困難):
    【子ども】おもちゃや教科書の片付けができない(机やランドセルが常に散らかっている)。宿題の計画的な時間配分ができない。
    【大人】仕事の優先順位がつけられず、直近の締め切りを落とす。デスク周りやPCのデスクトップが書類・アイコンで溢れかえっている。

  6. 精神的努力の持続を要するタスク(頭を使う作業)を避ける、嫌う:
    【子ども】長文読解の宿題や自由研究、作文など、じっくり考えて取り組まなければならない課題を極端に嫌がり、後回しにする。
    【大人】複雑な報告書の作成、データ分析、確定申告など、高い集中力と根気を必要とするタスクに手をつけられず、締め切り直前まで放置してしまう。

  7. タスクや活動に必要なものを頻繁に失くす:
    【子ども】学校に筆記用具や教科書、体操服、傘などを頻繁に置き忘れたり、どこかで失くして帰ってくる
    【大人】財布、鍵、スマートフォン、職場の身分証、重要な書類などをどこに置いたか分からなくなり、毎日探している。

  8. 外からの刺激によって、すぐに気が散る(易刺激性):
    【子ども】勉強中に外で車が通る音がしたり、窓の外に鳥が見えたりしただけで、完全に意識がそちらに向いて勉強がストップする。
    【大人】職場で他人の話し声、タイピング音、電話の呼び出し音が鳴るたびに集中が途切れ、元の作業に戻るのに時間がかかる。

  9. 日常の活動で忘れっぽい(約束や予定の失念)
    【子ども】毎日言われている「帰ったらすぐに手洗いをする」「明日の準備をする」といったルーティンを毎日忘れてしまう
    【大人】歯医者や美容院の予約、人との約束をすっかり忘れる。毎月の支払いや、頼まれていた日用品の買い出しなどを忘れてしまう。

2. 多動性・衝動性に関する9つの症状

  1. 手足をそわそわと動かす、または席でモゾモゾする: 
    【子ども】椅子に座っていても常に体をくねらせたり、机の上の消しゴムや鉛筆をずっといじり回している。
    【大人】じっと座っていなければならない場面で、絶えず貧乏ゆすりをしたり、手元のペンをカチカチ鳴らしたり、髪や顔を触り続けたりする。

  2. 席を離れることが求められる状況で、席を離れてしまう
    【子ども】授業中、給食の時間、あるいは映画館などで、じっと座っていられずに急に立ち上がって歩き回ってしまう
    【大人】会議や研修の最中、あるいはレストランで食事中、落ち着かなくなってすぐにトイレや喫煙などで席を立とうとする。

  3. 不適切な状況で、走り回ったり高い所へ登ったりする(大人は「落ち着かない感覚」)
    【子ども】スーパーの通路を全力で走り回ったり、登ってはいけない危険なフェンスや家具の上にすぐに登ろうとする。
    【大人】実際に走り回ることはないが、内面的に「じっといているのが耐えがたいほどの強いソワソワ感、焦燥感」を常に抱えている。

  4. 静かにレジャー活動に参加したり、遊んだりすることができない:
    【子ども】静かに読書をしたり絵を描いたりすることが苦手で、遊ぶ時は常に大声を出す、激しく動くなど騒がしくなってしまう。
    【大人】休日であっても家でゆっくり映画を見たり読書をして過ごすことができず、常にスケジュールを詰め込んで動き回ってしまう。

  5. まるで「モーターで駆動されているかのように」絶えず活動する:
    【子ども】朝から晩までエネルギーが切れることなく、常に動き回っていて、周囲の大人がついていけないほどタフに見える
    【大人】常に過密スケジュールで仕事や趣味に没頭し、周囲から「タフすぎる」「いつ休んでいるのか分からない」と言われるほど過剰に活動し続ける。

  6. しゃべりすぎる(多弁):
    【子ども】学校の授業中であっても、隣の席の友達や先生に向かって、思いついたことを脈絡なくノンストップで喋り続けてしまう
    【大人】一方的に自分の話ばかりをしてしまい、相手が話す隙を与えない。沈黙が耐えられず、どうでもいい話を過剰に喋り続けてしまう。

  7. 質問が終わる前に、せっかちに答えを出してしまう
    【子ども】先生が問題を出し終える前に「はい!」と大声で叫んで答えてしまう。他人のセリフを最後まで聞けない
    【大人】相手が話し終わっていないのに、その先を予測して「あ、それは○○ですよね」と会話を遮って結論を言ってしまう。

  8. 順番を待つことが困難である
    【子ども】遊具の順番待ちの列に並ぶのが我慢できず、横から割り込んで友達とトラブルになる。
    【大人】レジの行列、渋滞、人気店の待ち時間に耐えられず、強いイライラを感じて諦めたり、他人に怒りを感じたりする。

  9. 他人の邪魔をしたり、割り込んだりする
    【子ども】友達が他のおもちゃで遊んでいるところに急に突っ込んでいって横取りしたり、他人の会話に突然割り込む。
    【大人】同僚同士が仕事の話をしているところに勝手に入っていって自分の話にすり替えたり、他人の作業を奪って自分でやってしまう。

治療法について

当院では、お薬による治療(薬物療法)で脳のベースを整えつつ、具体的な「仕組みづくり(環境調整)」を生活に取り入れるアドバイスを行います。

1. 薬物療法

① アトモキセチン(商品名:ストラテラ)

非中枢刺激薬に分類されるお薬です。脳内のノルアドレナリンの働きを高め、不注意や多動・衝動性を改善します。毎日継続して服用することで、2~4週間ほどかけて徐々に効果が安定してきます。依存性の心配がなく、24時間効果が持続するため、1日を通して症状をコントロールしたい方に適しています。

② グアンファシン(商品名:インチュニブ)

非中枢刺激薬であり、脳内のシグナル伝達をスムーズにすることで、特に「多動性」や「衝動性(イライラや怒りっぽさ)」を抑える効果が期待できます。ストラテラ同様、毎日服用することで徐々に効果が現れます。血圧を下げる作用があるため、めまいや眠気などの副作用に注意しながら慎重に増量します。

③ メチルフェニデート(商品名:コンサータ)

中枢刺激薬に分類されるお薬です。脳内のドーパミンとノルアドレナリンの働きを強力に高め、高い即効性(飲んだその日から効果を実感しやすい)を持ちます。効果持続時間は約12時間です。適切な管理が必要な薬剤であるため、登録医のみが処方できるお薬です。

④ リスデキサンフェタミン(商品名:ビバンセ)

コンサータと同様に強力な効果を持つ中枢刺激薬です。【年齢制限について】:本剤は「6歳以上18歳未満の患者様」のみを対象として承認されているお薬です。18歳未満で処方を開始された患者様が、18歳以降も継続して服用することは可能ですが、「18歳以上になってから初めてビバンセを飲み始めること(新規処方)」は公的に認められていませんのでご注意ください。こちらも登録医による厳格な管理のもとでのみ処方されるお薬です。

併存症

ADHDの特性を抱えている方は、その生きづらさや社会生活での慢性的なストレス、周囲からのネガティブな評価が積み重なることによって、他の精神疾患を二次的に併存するリスクが非常に高いことが知られています。併存症を適切に診断し、並行して治療することは、社会生活の安定のために不可欠です。

うつ病双極症(躁うつ病)の併存: 特性によるミスやトラブルが原因で自信を失い、二次的に強い気分の落ち込みや意欲低下(うつ状態)を招くケースが目立ちます。また、気分のアップダウンを伴う双極症を併存している場合、ADHDの多動・衝動性と双極症の躁状態が見分けにくくなるなど、慎重な見極めが必要となります。まずは気分の波(薬物療法)をしっかりと安定させた上で、ADHDの治療を慎重に並行していくことが重要になります。

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