適応反応症(適応障害)について
生活の中で起きる特定のストレス(仕事、人間関係、環境の変化など)にうまく適応できず、日常生活や社会生活に支障が出てしまう状態を「適応反応症」といいます。これまで「適応障害」と呼ばれていた病気ですが、国際的な診断基準(DSM-5)の改訂に伴い、現在は「適応反応症」という呼び方に変わりました。
【適応反応症によく見られる特徴】
「仕事や学校に行こうとすると症状が強く出るけれど、休日は比較的元気に動ける」という傾向があります。これは特定のストレスに対して心や体が防衛反応を起こしているサインです。「自分ががんばれていないだけ」と思わず、心・体・行動のサインに耳を傾けてください。
心のサイン: 気分が激しく落ち込む(抑うつ気分)、涙もろくなる、常にソワソワして落ち着かない、イライラする、これまで楽しめていた趣味に興味が持てない
体のサイン: 朝起きられない、夜眠れない、動悸がする、食欲がわかない、頭痛や胃痛が続く
行動のサイン: 遅刻や欠勤が増える、仕事や家事でのミスが急に増える、お酒やタバコの量が急に増える
日常診療において、適応反応症の引き金となるストレスには以下のようなものが多く見られます。
職場のストレス: パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、過度な長時間労働、過重な責任、不本意な異動、職場の人間関係の悪化など。
プライベートのストレス: 家族間の不和(夫婦の葛藤、育児や介護の悩み)、離婚、親しい人との別れ、引越しや結婚による環境の急変など。
診断と症状(DSM-5による基準)
DSM-5では、以下の項目を目安に、ストレスの現れ方や生活への影響を総合的に評価して診断を行います。
明確な原因(ストレス因)がある: 「これが原因だ」とはっきり確認できるストレスに対して、そのストレスが始まってから3か月以内に、心のつらさや行動の変化が現れます。
ストレスの大きさに比べ、著しく強い苦痛を感じている: そのストレスに対して、通常考えられるよりもはるかに強い苦痛や、客観的に見ても不釣り合いなほどの深刻な苦痛を感じ、社会生活に支障をきたしてしまいます。
他の病気の基準は満たしていない: この段階では、症状がまだ本格的な「うつ病」や「パニック症」の診断基準には至っていない状態です。
治療法について
適応反応症は、「本人のキャパシティ」と「ストレスの大きさ」のバランスが崩れている状態です。そのため、お薬を飲むこと以上に原因(ストレス因)を遠ざけたり、解消したりするための「環境調整」が最も重要な治療となります。
1. 最も重要な治療は「環境調整」です
特に職場の出来事(ハラスメントや業務量など)が原因で症状が出ている場合、受診をされる前に、まずは職場の信頼できる上司や人事、あるいは産業医などの相談窓口に「今の現状」を相談することが非常に重要です。職場に現状を伝えることで、業務量の調整や配置転換など、環境調整がスムーズに進むきっかけになります。
2. 症状を和らげるためのお薬(対症療法)
環境調整を進める一方で、抑うつ症状、不安、不眠などを放置すると、さらに症状が悪化することがあります。このため対症的に薬物療法を必要とすることがあります。
抗うつ薬(SSRI、SNRI、ミルタザピンなど): 強い抑うつ症状や不安症状を和らげるために使用します。
依存性のない睡眠薬: 不眠を改善するために、依存性が極めて低いタイプ(オレキシン受容体拮抗薬など)の睡眠薬を選択します。
併存症
適応反応症は放置したり我慢し続けたりすると、他の深刻な精神疾患へと発展(併存)する恐れがあります。早期の段階でストレスの原因を解決し、環境を整えることが何よりも重要です。
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